いつ死んでも心残りのないように

海水浴場で砂に埋まった2011年は3.11のあった年で、
未曾有の大災害とその後の計画停電等で、
あっという間に過ぎて行きました。

後ろは決して振り向かず、
前だけを見て体を鍛えようと、
テニスを再開したり、
リタイアしたらやってみたいと思っていた陶芸を習い始めたり。

一見アグレッシブですが、
実は「いつ死んでも心残りのないように」が心の底にあって、
計画を前倒しにしたというのが実際のところ。
怖くて後ろは振り向けない気の弱さがありました。

マイナーな心持ちが5%、
残り95%は前向きな気持ちで過ごしていた感じでしょうか。
ガン患者だということを忘れていることがほとんどで、
意識して患者会などからも離れていました。

ただ、無理をしてしまいがちな性格はなかなか直らないもので、
2012年には農業団体で小さな販売所を作ったり、
それが縁で地元の有志の交流会に参加できたり、
段々と忙しくなっていきました。

夢だった仕事場の計画に着手

地域の若者たちと交流が広がり始めた頃、
ふらっと立ち寄ったおしゃれな工務店の社長に、
手持ち資金でどのくらいの小屋が建てられるか聞いてみたところ、
その場で平面プランをしてくださり、
「足りない分は就職しちゃえばいいんだよ」
と軽〜く言われました。

当時すでに49歳、
一番の夢が「夕日の見える」仕事場の建設でした。
大昔の会社員時代の貯金を元に、
フリーになったものの全く貯金は増えず、
バブルは弾けてリーマンショックも尾を引いて、
先行きは全く見えませんでした。

3人の子持ちで今更就職なんて…
と、ありえない話に笑って帰って来ましたが、
その日何の気なしに開いた求人サイトに、
自宅から車で20分のところで、
商品撮影のパートを募集しています!

その会社はG県から全国に名を知られるようになった会社で、
週4日4時間からの募集。
こんなことってあるんだ!!!
と思いながら、気が付いたら応募していました。

実に17年ぶりに履歴書を書き、
ポートフォリオを持って面接に行くことになり、
おそらくぶっちぎりで高齢だったにもかかわらず、
それまで撮影してきた写真が即戦力と評価され、
7倍の競争を勝ち抜いて採用していただけることになりました。

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